Q.
賃貸人から建物を借り受けて夫婦で同居していたものの、離婚することになり、その賃借人である夫婦の一方が財産分与者として相手方に対して建物賃借権を財産分与することとし、その相手方がその借家に引き続き居住することになった場合に気をつけるべき点を教えて下さい。
A.
建物賃借権の財産分与については、その建物が(1)民間の建物であるか、それとも(2)公営の建物であるかにより気を付けるべき点が異なります。
(1)民間の建物
通常、賃貸人の同意なく建物賃借権を譲渡した場合、無断譲渡により、背信行為があったものとして、賃貸人は、賃借人に対し、建物賃貸借契約を解除することができますが、無断で建物賃借権を財産分与を行う場合には、背信行為があったものと評価されることは少なく、賃貸人が建物賃貸借契約を解除できる可能性は低いとされます。
ただし、無断で建物賃借権を財産分与を行った場合でも、賃貸人による建物賃貸借契約の解除が必ず否定される保証はないため、建物賃借権を財産分与の対象とするときは、事前に賃貸人の同意を得ておく必要があります。
(2)公営の建物
原則、公営の建物を対象とした建物賃借権を財産分与することは認められませんが、離婚その他のやむを得ない事由があるときは、条例等による許可を条件として、これが認められる場合があります。
そのため、公営の建物を対象とした建物賃借権を財産分与する場合には、あらかじめ地方自治体と事前に協議することが重要といえます。